私は、革靴を「工芸品」だと思っています。
たとえば、漆塗りの器は、お皿やコップという日用品に芸術的な意匠を加えることで工芸品として扱われています。
同じように、履き物として身につける日用品でありながら、美しく見せるための意匠が盛り込まれた「革靴」もひとつの工芸品と言えるのではないでしょうか。
この記事で紹介する靴も、まさに工芸品だと思えるようなビスポークの一足です。
ビスポーク専門店「MISAWA & WORKSHOP」
「MISAWA & WORKSHOP」は、靴職人・三澤 則行氏によるビスポークの専門店です。
同氏は、靴職人としてだけではなくアーティストとしても活動をしており、靴をモチーフにした芸術品を生み出しています。
下の写真は、「曲げられた靴(Curved Boot)」というタイトルの作品です。
レディースシューズに見られるような曲線美が美しい作品です。
100 年以上前に主流だった伝統的な靴作りの技法や、革靴に実際に使用されるような素材を駆使して作られています。
そのほかにも、靴をモチーフにした作品を数々生み出しています。
(作品は、こちらのページでご覧いただけます)
これらの作品は、靴としての機能性はなく、芸術品として製作されています。
そして、革靴を芸術品として捉える美意識は、製作しているビスポークにも現れています。
「MISAWA & WORKSHOP」レイジーマン
紹介するのは、「MISAWA & WORKSHOP」 のレイジーマンです。
レイジーマンは「怠け者」という意味で、履き口の両サイドがゴムでできており脱ぎ履きがしやすいことからこの名前がついたそうです。
サイドエラスティックとも呼ばれます。
通常であれば靴紐が通っている部分には、細く切った薄い革を通しています。
つま先に向かうにつれて細い紐のような革の幅が広くなっており、全体を見たときのバランスが良く見えるようにデザインされています。
アウトソールは「べヴェルド・ウェスト」で仕上げられています。
べヴェルド・ウェストは、土踏まずの部分を細くすることでシルエットを美しく見せる伝統的な意匠です。
出し縫いのピッチは 14 番(1 インチ = 25.4mm につき 14 針)で、既成靴では見られないような細かいピッチです。
出し縫いのピッチを細かくすることで、繊細でエレガンスな印象になります。
コバの仕上げも綺麗で、非の打ち所がない丁寧な作りです。
使用されている革は、イタリアの名門タンナー・イルチア社のビンテージレザー。
革のキメは細かく、履き込んでいくとどう変化していくか楽しみです。
単なる履き物としてだけの靴ではなく、芸術作品のような雰囲気をまとったビスポーク。
気になる方は、ぜひオーダーしてみてはいかがでしょうか。
「MISAWA & WORKSHOP」の公式サイトはこちら。