革靴の手入れにミンクオイルを使うべきでない理由と 3 つの使いどころ

革製品の手入れ用品といえば、真っ先に「ミンクオイル」を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。

乾いて硬くなった財布や鞄、革ジャン等を柔らかい状態に蘇らせてくれます。

同じ要領で革靴の手入れにも使おうとしてる方は、「ちょっと待った!」です。

もしかしたら取り返しのつかないことになるかもしれません(恐)

というわけで、今回はミンクオイルについて解説します。

ミンクオイルとは?

ミンクオイルとは、「ミンク」という動物から取れる油脂で作られたオイルのことをいいます。

ミンクは主に北米に生息しているイタチ科の動物で、なんとも愛くるしい見た目をしています。

ミンクオイルは、アメリカでブーツのケア用品として生まれました。アメリカ製のブーツが日本に入ってきた際に一緒に輸入されてきたことで、日本でも知られるようになったようです。

いまでは革製品全般のケアに使用されるだけでなく、スキンケア用品などにも使用されています。

革靴にミンクオイルは使わないほうがいい?

可愛らしい動物から作られるミンクオイル。有名なシューケア用品のメーカーからも販売されています。

しかし!

革靴にミンクオイルは使わないほうがいいです。

より正確に言えば、ミンクオイルを使うことで生まれるさまざまなリスクを背負ってまで使う必要はないです。

実は、ミンクオイルはオイルのなかでも超優秀なオイルです。

優秀が故に、分量を誤って塗りすぎてしまうと逆効果になります。

過ぎたるは及ばざるがごとし、と言います。

ほんの少量であれば良い効果を発揮しますが、慣れていないと、たいていの場合塗りすぎてしまいます。

そして、塗りすぎによって起きる問題が結構やっかいです。

ミンクオイルを塗りすぎてしまうとどのような問題が起きるのでしょうか。

次章でみていきます。

ミンクオイルを使うことで起きうる問題

先ほど、「ミンクオイルは超優秀なオイル」と言いました。

何において優秀かと言うと、油分の補給です。ミンクオイルは、すこし塗るだけで油分がぐんぐん革に浸透していきます。

これは、ミンクオイルの表面張力が、他のシューケア用品でよく用いられる植物性の油と比べて弱いことに由来します。

表面張力の強い液体は、分子同士が引き合う力が強く、平面に落ちると球体になります。

革の表面に塗ったときも、一つにまとまろうとする力が働いて、なかなか革の繊維の奥まで浸透しません。

一方、ミンクオイルのように表面張力の弱い液体は、分子同士の引き合う力が弱く、バラバラに細かくなって革の繊維の奥深くまで浸透していきます。

これがミンクオイルが油分の補給という点において優秀といわれる理由です。

では、革に油分を補給すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

よく挙げられるのが、以下の 3 点です。

  • 乾燥しにくくなる
  • 柔らかくなる
  • 防水性が高まる

革は乾燥しすぎると、ひび割れ等を起こしやすくなります。油分を補給して、乾燥しにくくすることでこれを防げます。

また、柔らかくなることで履き心地が良くなります。油分によって水分が弾かれるため、防水性も高まります。

一見、良いことずくめに思えます。

しかし、メリットも行きすぎれば、以下のようなデメリットにつながってしまいます。

カビが生えやすくなる

乾燥しにくくなるということは、湿気を帯びやすくなるということでもあります。そうなると、カビが発生しやすくなります。

さらに、ミンクオイルの油分はカビの栄養分になります。ミンクオイルを塗りたくられ、ジメジメした場所に置かれた靴は、カビ菌にとってオアシスです。

あっという間に繁殖してしまいます。

形が崩れやすくなる

柔らかくなると、履き心地がよくなると同時に靴の形が崩れてしまうこともあります。

革の繊維の隅々まで油脂が浸透すると、ふにゃふにゃに柔らかくなり、形が崩れてしまうのです。

とくに、パリッとしたフォーマルなシルエットのビジネスシューズ等は、形が崩れるとその良さが失われてしまいます。

シミになる

油分が浸透しすぎて、油シミになることがあります。

水シミであれば比較的簡単に落とすことができますが、油のシミはなかなか落とすことができません。

汚れがつきやすくなる

ミンクオイルを塗ると、表面がペタペタして、汚れがつきやすくなります。また、一度ついた汚れを落とすのも一苦労です。

油分が浸透した革の表面がペタペタしてしまうのは、なんとなく想像がつくのではないでしょうか。

このように、ミンクオイルを塗りすぎることによって生じる問題はいくつもあります。

もちろん、他のシューケア用品でも使いすぎれば上記のような問題が起きますが、ミンクオイルは効果が抜群なだけに、かえってリスクがケア用品といえます。

ミンクオイルの代わりに使うべきもの

では、ミンクオイルの代わりに使うべきケア用品とは何でしょうか。

それは、乳化性クリーム防水スプレーです。

まず、乾燥を防ぐには乳化性クリームを使います。

乳化性クリームには、油分が含まれていますが、塗りすぎてもシミになってしまうようなケースは少なく、たとえシミになってもクリーナーで取れる程度です。

防水効果を高めるにはミンクオイルではなく、防水スプレーを使います。

ミンクオイルはスプレーよりも防水効果が強く、かつ長持ちすると言われます。しかし、雨が降りしきるジャングルを歩き続けるわけではありませんので、ミンクオイルの防水効果は、日常で革靴を履く場合には過剰だといえます。

(実際にジャングルに行く際は、ミンクオイルをべっとり塗り込んで防水した方がいいかも知れません。)

また、柔らかくするというのはそもそも必要でない場合があります。

というのも、革靴は、はじめのうちは多少硬く感じても、履いているうちにだんだんと馴染んできて、自然と柔らかくなってくるからです。

なかなか馴染まず、どうしても靴擦れなどが起きる場合には、ミンクオイルを使って柔らかくする方法もあります(次章で解説します)。

ただ、なかなか靴が馴染まず靴擦れが治らないということ自体レアケースだと思います(少なくとも私はあまり経験がありません)。

というわけで、ごく限られた場面でミンクオイルを使うことはあっても、日常的におこなう革靴の手入れにはミンクオイルは使わず、代わりに乳化性クリームと防水スプレーを使って安全に手入れをしましょう、というのが結論です。

ミンクオイルの使い方を 3 つ紹介します

「そんなこと言われてもミンクオイルもう買っちゃったんだけど!使いみちはないの?」

そんな方のためにミンクオイルの使い方を 3 つご紹介します。

  • アウトソールを柔らかくして、履き心地を良くする
  • 足が靴に当たる箇所を柔らかくして、靴擦れを防止する
  • 乾燥しきった革靴を一気に蘇らせる

順に手順を解説します。

今回は、モゥブレィから販売されているミンクオイルを使用します。

その 1:アウトソールを柔らかくして、履き心地を良くする

ミンクオイルをアウトソールに塗ることで、ソールの反りを良くすることができます。ラバーソールにオイルは浸透しないので、レザーソールに限った使い方です。

アウトソールに使用されているレザーは、長年の歩行にも耐えうる強度が求められます。通常、繊維がみっちり詰まっている丈夫な革です。

この繊維がみっちり詰まった革はかなり硬いため、歩きづらいと感じる方も多いようです。そんなとき、ミンクオイルを使って油分を補給し、ソールを柔らかくして履き心地を良くすることができます。

1. アウトソールの汚れを綺麗にする

まずは、クリーナーでアウトソールの汚れを拭き取ります。

汚れ落としには、モゥブレィのステインリムーバーを使用します。

未使用の場合は、から拭きでホコリを取る程度でいいでしょう。

ステインリムーバーをよく振って、10 円玉ぐらいの大きさを布に染み込ませます。

ステインリムーバーを染み込ませた布で、アウトソール全体を拭いて汚れを拭き取ります。

2. ミンクオイルを塗り込む

次に、ミンクオイルをソールに塗り込みます。

ソール全体に塗り込むのではなく、つま先からソールが地面に触れるくらいのところ(下の写真の赤い円の箇所)に塗っていきます。

布を指に巻いて、ミンクオイルの表面を少し強めになぞります。

ソールに塗り込みます。右半分の左半分の二回に分けて塗ると、全体に満遍なく塗ることができます。

3. から拭きする

最後にアウトソールをから拭きします。

これで完了です!

今回使用した靴はシングルレザーソールという比較的薄いソールで、元からそこまで反りが悪かったわけではありませんが、塗ったものと塗っていないものを履き比べてみたところ、ソールの反りがよくなったと感じました。

ダブルレザーソールやトリプルレザーソールの靴は、履き始めのソールはカッチコチなので、ソールの反りグセがつくまではミンクオイルで柔らかくすると良いかもしれません。

ただし、塗ったあとは少し滑りやすくなるので、ご注意を。

その 2:足が靴に当たる箇所を柔らかくして、靴擦れを防止する

ミンクオイルの革を柔らかくする効果を利用して、当たって痛い箇所を柔らかくし靴擦れを防止することができます。

革靴はだんだんと足に馴染んでくるので、多少の靴擦れであれば履き込むことで解消されますが、どうしても靴擦れしてしまう場合は試す価値はあると思います。

1. ミンクオイルを少し指にとる

アウトソールとは違い、今回は柔らかいアッパーの革に塗ります。布を使うと塗りすぎてしまう可能性があるので、分量を調整しやすいように指でミンクオイルを塗ります。

まず、人差し指でオイルの表面をなぞるように少し取ります。

2. 当たって痛い箇所に塗る

靴擦れする箇所にミンクオイルを塗り込みます。

塗りすぎ注意!

下の写真の赤い円の箇所の色が、若干暗くなっているのが分かるでしょうか?ここがミンクオイルを塗った箇所です。

油分が浸透して塗った箇所の色が変わってしまうことがあるので、黒以外の靴(特に色が薄い靴)は塗りすぎに注意しましょう。

3. から拭きする

最後にから拭きします。

塗った箇所が少し柔らかくなって、靴擦れを和らげてくれるはずです!

その 3:乾燥しきった革靴を一気に蘇らせる

履かずにずっと放置していた革靴が、乾燥しきって硬くなってしまった場合、ミンクオイルを使って革にしなやかさを取り戻すことができます。

多少乾燥しているくらいであれば、通常の革靴用のクリームを塗れば十分ですが、かなり乾燥が進んで革がカチコチに硬くなってしまっている場合は、ミンクオイルのほうが効果的です。

塗った箇所の色が変わってしまう場合があるので、黒以外の靴(特に色が薄い靴)は塗りすぎに注意です。

1. 靴紐を外す

靴紐を外します。

シューツリーを持っている場合は、入れて形を整えましょう。

2. ミンクオイルを塗る

布を指に巻き、ミンクオイルを少し強めになぞるように取ります。

ミンクオイルを塗ります。

一度では全体を塗りきれないので、右側、左側、つま先と甲に分けて順番に塗っていきます。

3. から拭きする

最後に乾拭きをします。

写真の靴は、元からそこまで乾燥していた靴ではないので違いはわかりにくいですが、少し革がしっとりとした質感になりました。

おわりに

革靴には基本的にミンクオイルは使わず、代わりに乳化性クリームや防水スプレーを使うようにしましょう。

以下の限定的な場面では効果を発揮しますが、くれぐれも塗り過ぎにはご注意ください。

  • アウトソールを柔らかくしたいとき
  • 靴擦れするとき
  • 革が乾燥しきって硬くなってしまったとき

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

この記事を書いた人

カタオカケン

東京在住、靴作りに勤しむ 27 歳です。作るのはもちろん、靴を眺めたり、靴を磨いたりするのも好きです。鏡面磨きはなかなか上手くできません。

SNS をフォローする

コメントはこちらから