【革靴図鑑 No.20】大塚商店(現:大塚製靴)ビンテージ チェルシーブーツ

「日本の革靴の歴史は短い」といイメージはありませんか?

私はなんとなくそういうイメージを持っていて、歴史の長さや技術力は、英国靴には敵わないと思っていました。

しかし、この記事で紹介しているブーツを目の当たりにして、英国と肩を並べるほどの長い歴史や高い技術力を日本は持っていることを知りました。

日本の革靴の凄さを示すために過去からタイムスリップしてきたような、そんな一足をご紹介します!

英国メーカーと肩を並べる日本のメーカー「大塚商店」

紹介するのは「大塚商店」というメーカーのブーツです。

大塚商店は、1950 年に改名され今は「大塚製靴」という名前で広く知られています。

この大塚商店が創業したのは 1872 年のこと。

どれぐらい古いのか、英国の老舗メーカーの創業年と比べてみましょう。

創業年
ションロブ 1866 年
大塚商店 1872 年
チャーチ 1873 年
クロケット & ジョーンズ 1879 年
エドワードグリーン 1890 年

驚くべきことに、チャーチやクロケット & ジョーンズといった英国の老舗メーカーよりも長い歴史を持っていることが分かります!

また、歴史が長いだけではありません。

1889 年のパリ万国博覧会では銀賞、1895 年のシカゴ万国博覧会では金賞を受賞するなど、技術的にも世界的に認められていたようです。

英国靴に勝るとも劣らない革靴が、日本にも存在していたのです!

大塚商店のチェルシーブーツ

それでは、靴について見ていきたいと思います。

箱に記載されている情報や、箱に貼られている郵便切手から、大正元年(1912 年)のものであると推定しています。

まずは、箱から見てみましょう。

木製の箱で、蓋には「禮(”しめすへん” に豊)装用靴」と書かれています。

大塚商店の木箱

「禮」は「礼」と同じ意味のある文字で、この靴が冠婚葬祭や式典などで着られるような礼装用に作られたものであることが分かります。

蓋を裏返すと、注文主の住所や宛名などが記載されています。

木箱の蓋の裏

左上に記載されている「拾貮円(12 円)」という価格が時代を感じさせます。

木箱の中に入っているのが、下の写真のブーツです。

大塚商店のチェルシーブーツ

足首を覆うシャフトの部分にサイドゴア(= ゴム)がついている「チェルシーブーツ」というデザインのブーツです。

大正天皇も同じようにチェルシーブーツを履いていたようです。

大正時代では、正装を着る際にチェルシーブーツを履くのがトレンドだったのかもしれません。

大塚商店のチェルシーブーツ・後ろ部分

サイドゴアは、履き口に向かって放射状に広がっています。

つま先からヒール部分のアッパーに使用されているのは、おそらくパテントレザーです。

経年劣化でところどころ剥げてしまっています。

パテントレザーのような革

出し縫いのピッチはとても細かく「よくこのピッチで仕上げられる工具がこの時代にあったな!」と思いました。

コバは “く”の字に形作られる “ヤハズ仕上げ” です。この仕上げは、日本独自のものなんだそうです。

シャフトの部分はグレーっぽい色のスムースレザーが使用されています。質感から、おそらく牛革でしょう。

グレーっぽい色の牛革

履き口の前部分には「OTSUKA & CO., TOKYO, NIPPON」と記載のあるフックがついています。

履き口の後ろ部分にも同じようにフックがついてます。

履き口の前側についているフック

これは、履くときに前と後ろ両側のフックを引っ張って履きやすくするためのものです。

底面をみてみると、土踏まずを細く絞り込んだべヴェルド・ウェストになっています。

べヴェルド・ウェスト

細部の仕上げが綺麗なのはもちろんのこと、全体を見たときのシルエットも美しいです。

土踏まずを絞ることで生まれる美しいシルエット

シューツリーは 3 ピースタイプのものです。

この時代に作られたのであれば、一つ一つを削り出して製作していたのでしょう。

とても手間暇がかけられています。

シューツリーは 3 ピースタイプ

いかがでしたでしょうか?

英国には素晴らしい革靴メーカーがたくさんあります。

それに負けないくらいのメーカーが日本にもあることをこのブーツを通じて感じることができました。

日本製も負けていません!

日本人として嬉しく思う反面、靴を作る身としては負けていられないという気分にさせられました。

今後の靴作りの参考になりそうです。

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