【革靴図鑑 No.25】Coin Loafer in the Wild 野生のコインローファー

この靴は、くすみ 👞MSY編集長@kusumincom さんから依頼をいただいて制作した靴です。

優しい雰囲気を意識したコインローファー

今回制作したのはコインローファーです。

コインローファーとは、甲の部分にあるストラップ状の革に切り込みが入ったデザインのローファーのことを指します。

「ハンドソーン・ウェルト製法」と呼ばれる伝統的な手縫いの製法で作りました。

くすみさんの柔和な人柄のイメージに合うよう、柔らかく優しい雰囲気になるように仕立てました。

柔かくて優しい雰囲気が出るようなデザインにしました。

使用した革はカールフロイデンベルグ社のもので、すこし明るめのブラウンカラーです。

カールフロイデンベルグは、最高品質の革を作っていたことで知られるドイツの皮革メーカーです(今はもうなくなっています)。

今回使用したのはカーフという生後 6 ヶ月以内の仔牛の革で、キメが細かく透明感のある艶があります。

透明感のある艶感が特徴の革です。

なかなかは手に入らない貴重な革なので、ミスしないよう慎重に作業しました。

つま先には U 字型の縫い目を入れています。

これは「ライトアングルモカステッチ」と呼ばれる仕様ですが、今回は縫い方をちょっとだけ工夫しています。

下の写真は、通常のライトアングルモカと今回のライトアングルモカを比較したものです。

左:通常のライトアングルモカ 右:今回のライトアングルモカ

通常のライトアングルモカは U 字型の内側に糸が見えていますが、今回のライトアングルモカは糸が見えていません。

これは、革の内部に糸を通しているからです。

今回使用した革はとても柔らかく、通常の縫い方をすると釣り込み(革を伸ばして靴の形にする作業)で縫い目から革が破れてしまいそうでした。

なんとかできないかと考え、この革の内部を通す縫い方を編み出しました。

つま先の先端とヒールは「スキンステッチ」と呼ばれる縫い方をしています。

スキンステッチは、2 つの革をつき合わせ、その 2 つの革の内部に糸を通して縫い合わせる技法です。

ヒール部分の繋ぎ目はのスキンステッチにしています。

革の内部に糸が通っているため外から糸は見えず、糸が通っている箇所に糸目が浮き出て独特の表情を生み出します。

柔らかくて薄い革なので、縫うときに針や糸を通すのが大変でした。

出し縫い(コバ周りにある縫い目)のピッチは、#12(1 インチにつき 12 針)にしています。

比較的細かいピッチで、細かければ細かいほどフォーマルで繊細な印象に仕上がります。

細かいピッチで縫うことで、繊細な印象になります。

ソールのウェスト部分には、リクエストいただいた「ヘ音記号」の飾り釘を入れています。

「ヘ音記号」の飾り釘です。

柔らかく優しい雰囲気になるようソールの色付けはせず、艶出しだけしています。

ヒールは、地面に向かってすぼまった形状にする「ピッチドヒール」にしました。

かかとから地面にかけてのラインを流れるように見せることで、シルエットが華奢で美しくなります。

ピッチドヒール仕様にすることで華奢で美しいシルエットになります。

ローファーは脱いだときに靴の中が見えるので、ライニングには汚れが目立たないブラックカラーの革しました。

ライニングにはブラックカラーの革を使用しています。

この靴ができるまで

今回の制作は、フィッティングを確認するための「仮縫い靴」を 2 度作り、木型を調整して最終的に 1 足作るという流れで制作しました。

紐靴であれば紐でフィット感を調整することができますが、ローファーは紐がないため調整ができません。

よって、二度仮縫い靴を作ってフィッティングの精度を高める必要がありました。

まず、1 度目の仮縫い靴を作ります。
仮縫い靴はフィッティングを確かめるためだけのもので、簡易的な作りをしています。
仮縫い靴を履いてもらい修正点を見つけていきます。
つま先部分をカットして、履いたときの足の状態を確認します。
仮縫いの結果を木型に反映します。
修正した木型で再度仮縫い靴を作ります。
2 度目の仮縫い靴を履いてもらい、さらなる改善点がないか探っていきます。
仮縫いの結果をふまえて木型を微調整します。
再調整をした木型で最終的な 1 足を作り上げていきます。
完成した靴を履いていただきました。2 度仮縫い靴を作ったことで精度の高いフィッティングにすることができました!

ギャラリー

この記事を書いた人

カタオカケン

東京在住、靴作りに勤しむ 27 歳です。作るのはもちろん、靴を眺めたり、靴を磨いたりするのも好きです。鏡面磨きはなかなか上手くできません。

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