この靴は、「17 歳のビスポークシューズ」というツイッターの企画で、ZinRyu / 靴師2.0@Zin_Ryu さんと共同で ITOMARU@ITOMARU15 さんへ製作した靴です。
シンプルなプレーントゥオックスフォード
今回製作したのは、シンプルなプレーントゥオックスフォードです。
製法はハンドソーン・ウェルト製法で、「フルハンドソーン」と呼ばれる伝統的な手縫いの製法で製作しました。
甲の部分からかかとまで革の切り返しがある「ロングヴァンプ」と呼ばれるタイプのオックスフォードで、甲からかかとまで伸びる線が特徴的なデザインです。
この靴は、一般的な靴よりも履き口を広くデザインしています。
履き口を広くして、着用時にクラシックな顔立ちに見えるように工夫しています。
「閂止め(かんぬきどめ)」と呼ばれる羽根の根元あたりにある補強のための縫い目は、「シャコ留め」という技法で縫い付けました。
手で縫う必要があるため手間のかかる技法ですが、ちょっとだけ靴の表情が豊かになります。
出し縫いのピッチは 12spi(1 インチにつき 12 針)です。
この出し縫いのピッチは細かければ細かいほど、ドレッシーで繊細な雰囲気になります。
12spi は比較的細かい方で、より繊細な雰囲気に仕上げています。
ヒールは、地面にかけてすぼまったように角度をつける「ピッチドヒール」です。
木型のバランスが崩れないように、すこしだけ角度がついています。
土踏まず部分は、「べヴェルド・ウェスト」という意匠を採用し、靴のシルエットが綺麗に見えるよう工夫しています。
アウトソールは、真っ黒に染め上げるカラス仕上げで、ウェスト部分には ITOMARU さんのイニシャル “i” を飾り釘でつけています。
この靴ができるまで
この靴の製作過程を紹介したいと思います。
デザイン
今回製作した靴は、ITOMARU さんが高校の卒業式に履く靴としてご依頼いただきました。
デザインは、卒業式の場にふさわしく、またその後も長く履き続けられるような、フォーマルで流行り廃りのないシンプルなデザインにしました。
ITOMARU さんが持つ靴のイメージを伺い、完成品の靴を絵に落としこんでいきます。
仮縫い靴の製作
「仮縫い」は、ビスポークをする際におこなうフィッティングとデザインを確認する工程です。
仮縫いのための靴を作り、サイズ感やデザインのバランスを確認して修正点を見つけていきます。
本製作
仮縫いが終わったら、木型や各パーツの型を修正して本製作に移ります。