革靴の手入れが面倒だと感じたら、まずは簡単なブラッシングからはじめよう

革靴の手入れをしたいと思ってやり方を調べてみると、なんだかたくさんの道具と手順が必要そうです。

難しく感じてなかなか始められない、あるいは数回やったけど続かないという方もいるのではないでしょうか。

もちろん、書籍やネットで出回っている方法で継続的に手入れができれば、それに越したことはありません。

ただ、面倒だなと後回しにして結局何もやらないよりは、簡単なことからでも始められたほうが断然いいです。

今回は、30 秒でできる簡単な手入れ「ブラッシング」について解説します。

「クリーナーやクリームを使わなくてもいいの?」と思う方もいるかもしれませんが、実際ブラッシングだけでもかなり効果があります。

30 秒でできる簡単な革靴の手入れ「ブラッシング」

ブラッシングは、両足 30 秒あればできる簡単な革靴の手入れです。

することはいたってシンプルで、馬毛のブラシでササッと靴についたゴミを払い落とすだけです。

靴は 1 日履いただけでも、下の写真のようにうっすらホコリやチリなどのゴミが付いた状態になります。

1 日履いたあとの靴

立った状態で上から見下ろしただけではゴミが付いていることに気がつきにくいかもしれません。

それでもきれいな状態と比べるとなんとなく色がくすんで見えるようになります。

これをブラッシングすると、下の写真のようになります。

ブラッシングしたあとの靴

ゴミを払い落としただけですが、革の発色が良くなって艶感も増し、きれいになりました。

これだけでも十分ブラッシングする価値はあります。

しかし、それだけではありません。

実はブラッシングには、一時的に見た目がきれいになるだけでなく、革の乾燥を防ぎ、革を良いコンディションに保つ効果もあります。

ホコリやチリなどが革の表面に付いたままだと、元来革に含まれている水分や油分が吸い取られ、乾燥が進んでひび割れなどを起こします。

そのため、革の表面にホコリやチリなどのゴミが付いたままにしないことは、とても重要です。

ブラッシングは「汚れたからするのではなく、革をきれいで健康な状態を保つためにする」というイメージをもってもらうといいかもしれません。

実際、「革靴の手入れにはクリーナーやクリームなどを使わず、ブラッシングだけで済ます」という方もいるほど、ブラッシングの見えざる効果は絶大です。

ブラッシングをやってみよう

用意するのは馬毛のブラシ 1 本だけです。

馬毛は毛先がしなやかなので、ホウキのような要領で、革の表面についたゴミを払い落とすことができます。

おすすめの馬毛ブラシは、ドイツのシューケア用品ブランド・コロニルの馬毛ブラシです。

コロニルの馬毛ブラシ

馬毛ブラシを選ぶときのポイントは、「持ち手の大きさ」と「毛先の長さ」です。

持ち手が大きいとしっかり握ってガシガシとブラッシングできます。

また、毛先が長いとそのぶん毛先がよくしなって効率的にゴミを払い落とすことができます。

数ある商品のなかでも、コロニルの馬毛ブラシは持ち手が大きい & 毛先が長いので ◎ です。私もずっと使っています。

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馬毛ブラシは消耗品ではなく、ずっと使い続けられるものです。少々値段が高くても、長く使うつもりで使いやすいブラシを選んでおくのがいいと思います。

さて、ブラッシングのやり方ですが、「靴の履いた状態でやる方法」と「靴を手に持ってやる方法」があります。

どちらでもかまいません。

靴を履いて玄関から出る前にブラッシングするもよし、帰ってきて靴を脱いで手に持ってブラッシングするもよしです。

靴を履いた状態でブラッシング

靴を履いたままでブラッシングするときは、座るか、屈んだ体勢でおこないます。

かがんだ体勢でするときは、階段や段差にブラッシングする方の足を乗せるとブラッシングがしやすいです。

靴のつま先、右側面、左側面、かかと周りと前から順にブラッシングしていくと、やり残しがなく全体をブラッシングできます。

シワの部分に入り込んだゴミを払い落とすために、シワの方向に沿ってブラッシングするのがコツです。

片足が終わったら、もう片足も同じようにブラッシングします。

靴を手に持ってブラッシング

靴を手に持ってブラッシングするときは、靴の中に手を突っ込で靴を持ちます。

靴紐を外す必要はありませんが、ブラッシングの邪魔になるので靴の中に入れておきましょう。

甲のシワを伸ばすように手をすぼませて靴を持つと、シワに入り込んだゴミを払い落としやすくなります。

甲の部分、右側面、左側面、かかと周りと、前から順番にブラッシングしていきましょう。

片足が終わったら、もう片足も同じようにブラッシングします。

これで終わりです。簡単ですね!

ブラッシングを習慣化する

ブラッシングは毎日やるのがオススメです。

1 日おきや 2 日おきでもかまいませんが、毎日やるほうが習慣化しやすいです。

習慣にしてしまえば、ブラッシングするのを忘れてしまったり面倒に感じたりすることもなくなります。

たとえば、玄関の目に付きやすい場所に馬毛ブラシを置いておき、履くときにブラッシングする、脱いだときにブラッシングするなど、自分なりにブラッシングのタイミングを決めておくと習慣化しやすいです。

はじめはすこし面倒に感じるかもしれませんが、ぜひブラッシングを習慣にしてみてください!

ブラッシングの効果と、次のステップ「乳化性クリームを使った手入れ」

ブラッシングの効果を一度整理しておきましょう。

ブラッシングには、以下の 2 つの効果があります。

  • 革靴をきれいに見せる
  • 革の乾燥を防ぐ

1 つは、革靴をきれいに見せる効果です。

上でも紹介した通り、革靴にゴミがついていると薄汚く見えます。

ブラッシングでゴミを払い落とせば、革の発色が良くなり艶感も増して、見た目がきれいになります。

もう 1 つは、革の乾燥を防ぐ効果です。

革の表面についたホコリやチリといったゴミは、革に含まれる水分や油分を吸い取り、革の乾燥を進めます。

乾燥が進むとひび割れや色あせといった問題が起きます。

たった 30 秒でできて、靴をきれいに健康に保てる。ブラッシングは最も簡単で、かつ最も効果の高い手入れ方法といっても過言ではありません!

ただ、ブラッシングではできないこともあります。

それは、革に水分と油分を補給することです。

ホコリ等が表面についていなくても、革に含まれる水分や油分はゆっくりと抜けていってしまいます。

また、雨などに降られると、雨が乾く過程で革に含まれる水分や油分も一気に抜けてしまいます。

革靴をよりきれいに長く履き続けるためには、定期的に抜けてしまった水分と油分を補う作業が必要です。

ここで活躍するのが「乳化性クリーム」と呼ばれるクリームです。

乳化性クリームを塗ることで、革に水分と油分が補給され、潤った状態に戻ります。

艶出しの効果もあるので、乳化性クリームを塗るとじんわり光って清潔感のある見た目になります。

左:乳化性クリームを塗っていない靴 右:乳化性クリームを塗った靴

ただ、乳化性クリームを使うには他にも道具が必要ですし、ブラッシングに比べると時間もかかります。

とはいえ、慣れれば 10 分ほどで終わりますし、月に 1 回程度で十分なので頻繁にする必要もありません。

ブラッシングが習慣化できたら、ぜひ「乳化性クリームを使った手入れ」もしてみてください。

「乳化性クリームを使った手入れ」をするためには

乳化性クリームを使った手入れをするためには、以下のようにたくさんの道具が必要です。

  • シューキーパー
  • 馬毛ブラシ
  • クリーナー
  • 乳化性クリーム
  • ペネトレィトブラシ(あると便利)
  • 豚毛ブラシ

これらの道具を揃えるには「靴磨きセット」を購入するのが近道です。

靴磨きセットを購入すれば、一度にすべての道具を揃えることができます。

私のおすすめの靴磨きセットは「ワイアールエムエス モゥブレィ シューツリー付き フルセット」です。

5000 円ほどで買える靴磨きセットで、上の表で紹介したすべての道具が入っています。

道具ひとつひとつのクオリティーも良く、これから道具を揃える初心者の方にオススメです。

セットの詳しい内容は下記の記事で紹介しています。どんな道具が入っているか知りたい方はあわせてご覧ください。

靴職人が選ぶおすすめの靴磨きセットまとめ。初心者向けからプレゼント向けまで

手入れの詳しい手順は下記の記事で紹介していますので、「乳化性クリームを使った手入れ」をする際にはぜひ参考にしてみてください。

革靴の手入れ方法

そのほか革靴を綺麗に長持ちさせるためのコツ

さいごに、ブラッシング以外で革靴をきれいに長持ちさせるためのコツをご紹介します。

どれも簡単で時間もかからないことなので、ぜひ実践して革靴を長く綺麗に履き続けましょう!

履くときは靴べらを使う

革靴を履くときは靴べらを使います。

靴べらを使わずに履くと、かかとの部分に上から力が加わって履き口が潰れてしまいます。また、無理やり履くことで型崩れすることもあります。

手入れが行き届いたピカピカの革靴でも、履き口が潰れていたら台無しです。

革靴を履くときは必ず靴べらを使って、履き口が潰れないようにしましょう。

スタンドタイプの長めの靴べらは、玄関に置いても邪魔になりにくく、直立の体勢でも使いやすいのでオススメです。

脱ぐときはかかとを持って脱ぐ

革靴を脱ぐときは、靴のかかと部分を持って脱ぎます。

疲れていたり急いでいたりすると、立ったまま両足のかかと同士をひっかけてグイッとするような脱ぎ方をしてしまう方がいると思います。

布地のスニーカーであれば、この脱ぎ方でも問題ないかもしれません。

しかし、革靴の場合はこの脱ぎ方をすると、かかとの部分に傷がついてかなり目立ちます。

革靴を綺麗に履き続けるためには、かかとを持ってグイッと外すようなイメージで脱ぐようにしましょう。

脱いだらシューキーパーを入れておく

履いていないときはシューキーパーを靴の中に入れておきます。

シューキーパーは木やプラスチックでできた靴の形をした道具で、これを靴の中に入れておくことで型崩れを防ぐことができます。

革靴を長く履いていると歩いたときに力が加わり、つま先がどんどん反り上がってきます。

そのまま履き続けると、甲の部分に深いシワが入って古びた印象になるほか、最悪の場合シワの部分にひび割れが起きてしまうこともあります。

シューキーパーを靴に入れると、ソールの反り返りをおさえて深く入った甲のシワをピンと伸ばすことができます。

革靴を脱いだタイミングでシューキーパーを入れるようにすれば、型崩れをしていないピシッとした綺麗な状態を長く保ち続けることができます。

下の記事でシューキーパーの選び方を解説しているので、シューキーパーを購入するときは参考にしてみてください。

革靴には欠かせないシューキーパーの選び方とおすすめ紹介

ローションタイプのクリームを使って簡単な手入れをする

革に水分と油分を補給するには「乳化性クリームを使った手入れ」ができればベストです。

しかしなかには「手入れをする時間がない」「手入れに必要な道具が足りない」という方もいるはずです。

そんな方に、ローションタイプのクリームを使った手入れ方法をご紹介したいと思います。

使うのは、馬毛ブラシに加えて、「サフィール ユニバーサルレザーローション」と「布(使い古した T シャツなど)」です。

ユニバーサルレザーローションは、革の汚れ落とし、保湿、艶出しがいっぺんにできる便利なクリームです。

このユニバーサルレザーローションを使った手入れは「乳化性クリームを使った手入れ」の簡易版で、効果は若干下がりますが、簡単にできるのが特徴です。

使い方を解説します。

まずはじめに、馬毛ブラシでブラッシングします。

シワの部分は、入り込んだゴミを払い落とせるようにシワの方向に沿ってブラッシングしましょう。

ブラッシングが終わったら、次に布を指に巻きつけます。

私はいつも下の写真のような手順で巻いています。

つぎに、布にローションタイプのクリームを取ります。クリームの量は下の写真くらいが目安です。

ブラッシングしたとき同じように靴の中に手を入れて持ち、靴に塗っていきます。

クリームがダマになってしまうことがあるので、素早く全体に塗り広げるのがコツです。

力を入れてゴシゴシすると革に傷がついてしまうことがあるので、優しくなでるように拭きましょう。

一度では靴全体を塗りきれないので、まずは右半分、もう一度クリームを取って左半分、というように 2 回に分けて全体に塗っていきます。

塗り終わったら、次に布の綺麗な面を使って余分なクリームを拭き取ります。

革にクリームが残っているとクリームが酸化して革を傷めてしまうことがありるので、入念に拭き取りましょう。

これで手入れは終わりです!

「乳化性クリームを使った手入れ」と同様、月 1 くらいの頻度でできればいいでしょう。

おわりに

この記事では、革靴の簡単な手入れ方法や革靴をより長持ちさせるためのコツを紹介しました。

たった 30 秒の簡単なブラッシングをするだけでも、革靴は見違えるように綺麗になります。

手入れが面倒に感じてなかなか始められない方、何度かしてみても継続してできない方は、ぜひブラッシングからはじめてみてください。

ブラッシングに慣れてきたら、乳化せクリームを使った手入れにも挑戦してみましょう!

コメントはこちらから

  • 乳化性のクリーム塗った靴と塗ってない靴の写真なのですが、両方とも右とかいてありませんか?

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