革靴の王道といえば、茶色の革靴ではないでしょうか。
茶色であればどんな服装にも合わせやすく、経年変化も表れやすいのでガシガシ履きたくなります。
「アンティーク仕上げ」で色の濃淡を出して雰囲気を変えられるのも、茶色の革靴の楽しさの 1 つです。
一方で、黒の靴に比べて汚れが目立ちやすいので、綺麗に履くためには定期的に手入れしなければいけません。
この記事では、茶色の革靴を手入れする方法、そして使い込んだアンティーク家具のような雰囲気を出すアンティーク仕上げの方法をご紹介します。
革靴に手入れが必要な理由
革靴を綺麗に履き続けるためには、手入れが不可欠です。
革にはもともと油分や水分が含まれていますが、時間が経つにつれて抜けていき、だんだんと乾燥していきます。
乾燥が進むと、艶がなくなり、色もくすんでいきます。
柔軟性が失われてもろくなり、最悪の場合ひび割れなどの問題が起きることもあります。
クリームで革に水分と油分を与えて乾燥から守ることが、革靴を長く履くために一番大切です。
月に 1 回くらいの頻度でクリームを使って手入れすれば、綺麗な状態をキープしながら長年履き続けることができます。
茶色の革靴ならではの楽しみ、アンティーク仕上げ
この記事では、「普通の手入れ」と「アンティーク仕上げ」の 2 種類の手入れの方法を解説しています。
普通の手入れは、靴の色を変えないベーシックな手入れです。
靴の色自体は変わりませんが、全体に艶が出て綺麗になります。
一方のアンティーク仕上げは、つま先やかかとなどに色の濃淡を出す手入れです。
使い込んだアンティーク家具のような見た目になるのが特徴です。
上手くやるにはある程度の慣れは必要ですが、そこまで難しくはありませんし、やり直しもできます。
見た目の雰囲気を変えてみたいときは、アンティーク仕上げにチャレンジしてみてもいいかもしれません。
手入れの前に準備するもの
「普通の手入れ」も「アンティーク仕上げ」も基本的に使う道具は同じですので、まとめて紹介します。
シューキーパー
まず、靴の形が崩れないようにするためにシューキーパーを用意します。
靴は履くたびにソールに反りグセがつき、グデンとした見た目が見る人にだらしない印象を与えてしまいます。
シューキーパーでソールの反りを矯正し、靴の形をピシッと綺麗に保つようにします。
靴の形を綺麗に保つためには、靴のサイズに合っているシューキーパーでなくてはなりません。
「革靴には欠かせないシューキーパーの選び方とおすすめ紹介」でシューキーパーの選び方を紹介しています。
これからシューキーパーを購入する方は、ぜひ参考にしてみてください。
馬毛ブラシ
靴についたゴミを払い落とす馬毛のブラシを用意します。
一日履いたあとの靴をよく見てみると、ホコリやチリなどがついているのがわかります。
毛先の柔らかい馬毛のブラシを使えば、ホコリやチリを箒のようにササッと払い落とすことができます。
全体をブラッシングするので、しっかり持つことができる大きいブラシがおすすめです。
クリーナー
馬毛ブラシだけでは落としきれない細かいゴミや汚れを拭き取るためにクリーナーを用意します。
革を痛めることなく汚れを落とすことができるモゥブレィのステインリムーバーがおすすめです。
乳化性クリーム
靴に油分と水分を補給し、さらに艶を出すために乳化性クリームを用意します。
基本的には無色(ニュートラル)のクリームを使います。
ただ、色落ちや傷を目立たなくしたい場合は、色付きのクリームを選んでもいいでしょう。その場合は、靴と同じかすこし明るめの色を選ぶようにします。
色の選び方は「革靴用のクリームの色の選び方、クリームの使い方と落とし方の解説」で紹介しています。
色選びに悩んだ方は参考にしてみてください。
アンティーク仕上げの場合は追加で 1 つ用意する
アンティーク仕上げをする場合は、ここでさらに 1 つ色付きのクリームを用意します。
靴と同じ色合いの濃いめの色を選ぶと良い感じに仕上がります。
この記事では、手近にあったモゥブレィ クリームナチュラーレを使用しています。
好みにもよりますが、明るめの茶色の革靴ならダークブラウン、暗めの茶色の革靴ならブラックのクリームなどがいいと思います。
下の写真は明るめの茶色の靴にそれぞれダークブラウンとブラックを塗ってみた例です。
実際に塗ってみてイメージと違った場合はクリーナーで落とすこともできるので、はじめは何色か試してみるのもいいかもしれません。
ペネトレィトブラシ
ペネトレィトブラシは、クリームを塗るための小さいブラシです。
手を汚さずにクリームを塗れるので、とても重宝します。
豚毛と馬毛のペネトレィトブラシがありますが、個人的には馬毛のものがおすすめです。馬毛の方が毛先が柔らかく、筆のような感覚で使用することができます。
豚毛ブラシ
ペネトレイトブラシで塗ったクリームを全体に均一に伸ばしていくための豚毛ブラシを用意します。
豚毛は馬毛に比べて毛先が固いので、クリームを薄く均一に行き渡らせることができます。
布
布はクリーナーで汚れを拭き取るときと、最後の仕上げに磨くときに使います。
使い古した T シャツなどでも代用可能です。
手入れの手順(普通の手入れ編)
それでは、手入れの手順を解説していきます。
まずは、「普通の手入れ」から解説します。「アンティーク仕上げ」をする場合は[こちら]()からスキップしてください。
普通の手入れは以下の 6 ステップでおこないます。
- シューキーパーを入れる
- 馬毛ブラシでホコリを落とす
- クリーナーで汚れを拭き取る
- ペネトレィトブラシで乳化性クリームを塗る
- 豚毛ブラシでクリームをなじませる
- 布で磨く
大きな流れとしては、1 〜 3 までのステップで靴についた汚れを落とし、4 〜 6 までのステップでクリームを塗り、布で磨きます。
茶色の靴の場合、クリーナーや乳化性クリームが一箇所に固まりシミになることがあるので、3 と 4 のステップは素早くおこなうことを意識します。
両足あわせて 20 分程で仕上げます。
手順 1. シューキーパーを入れる
まずは、シューキーパーを入れます。
シューキーパーを入れることで靴の形が保たれ、手入れがしやすくなります。
手順 2. 馬毛ブラシでホコリを落とす
次に、馬毛ブラシでブラッシングします。
靴の表面にホコリや砂などが付いたままだと、クリームを塗るときに傷がついてしまったり、クリームがダマになって固まったりしてしまいます。
ガシガシとブラッシングして、しっかりゴミを払い落としましょう。
手順 3. クリーナーで汚れを拭き取る
クリーナーを使ってブラシでは落としきれない細かい汚れ、古いクリームやワックスを落とします。
布を指に巻いたら、クリーナーをよく振って布に染み込ませます。10 円玉くらいの大きさに染み込ませるのが目安です。
クリーナーを染み込ませた布で靴全体を拭きます。ゴシゴシすると革の表面が荒れてしまうので、優しく拭きましょう。
一度では拭ききれないので、2〜3 回クリーナーを布に染み込ませて全体をまんべんなく綺麗にします。
シミにならないように素早く拭いていきます。
手順 4. ペネトレィトブラシで乳化性クリームを塗る
次に、クリームを塗っていきます。
ペネトレィトブラシにクリームを取ります。下の写真ぐらいの量が目安です。
ブラシにクリームを取ったら、シミにならないようにサッと素早く塗り広げます。
一度では塗りきれないので、2〜3 回に分けて全体に塗りましょう。
色付きクリームを使う場合は、傷や色落ちが目立つところに重点的にクリームを塗ります。
手順 5. 豚毛ブラシでクリームをなじませる
豚毛ブラシでブラッシングし、クリームをなじませます。
クリームを伸ばすようなイメージで、力を入れてブラッシングするのがコツです。
豚毛ブラシでブラッシングすると、ブラシの毛先が余分なクリームを絡めとってくれるので、すこしだけ艶が出てきます。
手順 6. 布で磨く
最後に、布で磨きます。
すこし力を入れながら拭くと、だんだんと艶が出てきます。
全体に艶が出たら終わりです!
ビフォーアフター
下の写真は、手入れ前と手入れ後を比較したものです。
手入れ前は色がくすんで艶がありませんでしたが、手入れ後は発色もよくなり艶も出ています。
手入れの手順(アンティーク仕上げ編)
アンティーク仕上げは以下の 8 ステップで行います。
- シューキーパーを入れる
- 馬毛ブラシでホコリを落とす
- クリーナーで汚れを拭き取る
- クリーナーで色を濃くしたい部分を強めに拭く
- ペネトレィトブラシで全体に乳化性クリームを塗る
- 色を濃くしたい部分に色付きクリームを塗る
- 豚毛ブラシでクリームをなじませる
- 布で磨く
1 〜 3 のステップで靴についた汚れを落とすところは「普通の手入れ」と同じです。
どの部分をアンティーク仕上げにするかは好みですが、「芯材」という補強材が入っているつま先やかかと部分にするのが一般的です。
この記事では、つま先をアンティーク仕上げにしてみます。
茶色の靴の場合、クリーナーや乳化性クリームが一箇所に固まりシミになることがあるので、3 と 4 のステップは素早くおこなうように意識しましょう。
所要時間は、両足あわせて 30〜40 分程です。
手順 1. シューキーパーを入れる
まずは、シューキーパーを入れます。
シューキーパーを入れることで靴の形が保たれ、手入れがしやすくなります。
手順 2. 馬毛ブラシでホコリを落とす
次に、馬毛ブラシでブラッシングします。
靴の表面にホコリや砂などが付いたままだと、クリームを塗るときに傷がついてしまったり、クリームがダマになって固まったりしてしまいます。
ガシガシとブラッシングして、しっかりゴミを払い落としましょう。
手順 3. クリーナーで汚れを拭き取る
クリーナーを使ってブラシでは落としきれない細かい汚れ、古いクリームやワックスを落とします。
布を指に巻いたら、クリーナーをよく振って布に染み込ませます。10 円玉くらいの大きさに染み込ませるのが目安です。
クリーナーを染み込ませた布で靴全体を拭きます。ゴシゴシすると革の表面が荒れてしまうので、優しく拭きましょう。
一度では拭ききれないので、2〜3 回クリーナーを布に染み込ませて全体をまんべんなく綺麗にします。
シミにならないように素早く拭いていきます。
手順 4. クリーナーで色を濃くしたい部分を強めに拭く
先ほどと同じ手順でクリーナーを布に染み込ませ、今度はアンティーク仕上げしたい箇所(色を濃くしたい箇所)を強めにゴシゴシと拭きます。
強めに拭いて革の表面をすこしだけ荒らし、色をつきやすくするのが目的です。
すこし色が落ちたようになれば OK です。
手順 5. ペネトレィトブラシで全体に乳化性クリームを塗る
次に、無色の乳化性クリーム(傷や色落ちを目立たなくしたいときは色付きクリーム)を全体に塗っていきます。
アンティーク仕上げにしたい箇所には濃い色のクリームを塗るので、そこを避けるように塗ります。
クリームを下の写真を目安にブラシにとります。
シミにならないようにサッと素早く塗り広げます。
手順 6. 色を濃くしたい部分に色付きクリームを塗る
アンティーク仕上げをしたい部分に、濃い色の色付きクリームを塗っていきます。
クリームは、一番色を濃くしたい部分を「濃く塗る」と、その周辺をぼやかす「グラデーションをつける」の 2 段階で塗っていきます。
2 段階に分けて塗ることで、仕上がりに色むらが出にくくなります。
まずは、「濃く塗る」です。クリームを指に取り色を一番濃くしたい部分にクリームをつけます。
クリームを塗るというより、乗せて表面を覆うようなイメージです。
つぎに、「グラデーションをつける」です。同じように指にクリームを取り、境界線をぼやかすように薄く塗ります。
ここまでで、下の写真のような状態になります。
多少の色むらであれば次のブラッシングの工程で消えるので、この段階で完璧に仕上げる必要はありません。
失敗したと思ったら、クリーナーで拭き取ってもう一度試してみましょう。
ステッチにクリームの色がつくので注意
靴のデザインやアンティーク仕上げをする箇所によっては、アッパー(靴のソールより上側の表面)のステッチ(縫い目)にクリームの色がついてしまう場合があります。
ステッチの色を変えたくない場合は、これを避けるようにクリームを塗りましょう。
手順 7. 豚毛ブラシでクリームをなじませる
豚毛ブラシでブラッシングして、クリームをなじませます。
最初に、色の濃いクリームを塗っていない部分をブラッシングします。クリームを伸ばすようなイメージで力を入れてブラッシングするのがコツです。
次に、色の濃いクリームを塗った箇所をブラッシングしていきます。
色の濃い方から薄い方へ流れるようにブラッシングすると、境界線がぼやけて綺麗なグラデーションになりやすいです。
このブラッシングで色の濃淡が決まります。
もしイメージと違うようなら、クリームをもう一度塗ったりクリーナーで拭き取ったりなどして色味を調整します。
手順 8. 布で磨く
最後に、布で磨きます。
あまり力を入れすぎると色の濃いクリームが剥がれてしまうので、優しく拭くイメージです。
全体を磨いて艶が出てきたら終わりです。
ビフォーアフター
下の写真は、手入れ前と手入れ後を比較したものです。
つま先だけ色が濃くなり、立体感のある仕上がりになりました。全体的に艶も出ています。
アンティーク仕上げは、革の色自体を変えているというよりも色の濃いクリームを乗せているような状態です。
強くこするとクリームが剥がれて色が禿げたように見えてしまうことがあるので、鏡面磨きをしてワックスでコーティングするのがオススメです。
ワックスのコーティングがクリームの膜を保護してくれるほか、さらに艶が出て仕上がりも綺麗になります。
下の写真は、アンティーク仕上げにワックスを使用した鏡面磨きをした写真です。
パリッとした艶と色の濃淡の相性がバッチリ合います。
写真は無色のワックスを使用していますが、靴に近い色のワックスを使用すると色に統一感が出て綺麗に仕上がりやすいです。
「革靴をピカピカに輝かせる鏡面磨き(ハイシャイン)の方法とその落とし方」で鏡面磨きの方法を紹介しています。ぜひ試してみてください。
おわりに
ここまで読んで頂きありがとうございました。
茶色の革靴は黒に比べると色が薄いので、そのぶん取り扱いはデリケートです。
しかし、手入れをすればするほど経年変化を存分に楽しむことができますし、なにより愛着がどんどん増していきます。
一生のお供だと思って手入れしながら、革靴を長く楽しみましょう!