革靴の醍醐味といえば、履くにつれて表情が変わっていく「経年変化」を楽しめるところです。
経年変化によって色艶が増した靴は、新品の革靴にはない独特の魅力があります。
しかし、革靴をなんの手入れもせずに履いているだけでは、経年変化を楽しむことはできません。
手入れをしていなければ、色が褪せて艶もなくなり、ただ単に「劣化」していくだけです。
それでは、革靴の経年変化を最大限に楽しむためには、一体いつ、どれぐらいの頻度で手入れをすればいいのでしょうか?
この記事では、新品の革靴を購入してから 1 年の間で、手入れをするタイミングや頻度について解説したいと思います。
重要度がわかる「たいせつさレベル」
革靴の手入れにはいくつもの方法があり、なかには長く履くために欠かせない手入れや、必ずしも必要ではない手入れがあります。
どの手入れが大切なのかを分かりやすくするため、それぞれの手入れの重要度がわかる「たいせつさレベル」を設定しました。
革靴の手入れに慣れていない方にとって、いきなりすべての手入れをするのは大変なので、まずは長く履くために「たいせつさレベル」が高い手入れから初めてみるのがおすすめです。
この記事のもくじ
新品の革靴を買ったら、履き下ろす前に手入れする(たいせつさレベル:★★★★☆)
新品の革靴を買ったら、履き下ろす前に手入れをします。
履き下ろし前の手入れは、革靴を長く楽しむため「出発点」的な手入れです。
「新品だから、手入れなんていらないんじゃない?」と思うかもしれませんが、新品の革靴は意外にも乾燥しきっているので、履き下ろす前の手入れはとても大切です。
革靴は製造の最後の工程で大抵手入れがされていますが、そこから保管され、運送され、店頭に並んで…… と、実際の手元に届く頃までにかなりの時間が経過します。
時間が経って乾燥した革靴をそのまま履くと、以下の 2 つの問題が起きる可能性があります。
- ひび割れ
- シミ
まずひとつは「ひび割れ」です。
ひび割れは、革が乾燥してもろくなることで起きます。
革が乾燥した状態で革靴を履くと、グッと踏み込んだときにシワの部分に細かいひび割れができることがあります。
いきなり穴が空くほどの大きなひび割れができることはまずありませんが、細かいひび割れができると、履いていくうちにひび割れが広がってくる可能性があります。
革靴をきれいに長く楽しむためには、履き下ろす前に乳化性クリームを使って手入れをして、革に潤い(水分と油分)を与えてひび割れを予防することが大切です。
もうひとつの理由は「シミ」です。
シミは、ジュースや泥水といった色が付いた水が染み込んで、革の繊維に色がつくことでできます。
革は乾燥していると水を吸収しやすいため、革が乾燥した新品の革靴はシミができやすい状態だといえます。
履き始めにいきなりなにかこぼしてシミができてしまうと…… 考えただけでもテンションが下がりますよね。
不測の事態に備え、乳化性クリームを使って革に潤いを与えてシミができにくい状態にします。
新品の革靴を手入れする方法やコツは、下の記事で詳しく解説しています。
手入れのほかに、つま先にトゥスチールをつけたり、シワ入れをしたりなど、新品のときにしておいたほうがいいことも紹介しています。
新品の靴を買ったら、ぜひこの記事に目を通してみてください。
1 日履いたら、馬毛ブラシでブラッシングする(たいせつさレベル:★★★★★)
革靴を 1 日履いたら、馬毛ブラシでブラッシングをします。
することはいたってシンプルで、馬毛ブラシでブラッシングして靴についたゴミを払い落とすだけです。
30 秒で終わる簡単な手入れですが、その効果は絶大です。
1 日履いた革靴をじっくり見てみると、うっすらとホコリやチリをかぶっているのが分かります。
こういったホコリやチリといったゴミを、馬毛ブラシでブラッシングして払い落とします。
このブラッシングには、以下の 2 つの効果があります。
- 革靴をきれいに見せる
- 革の乾燥を防ぐ
ひとつは、「革靴をきれいに見せる」効果です。
ホコリやチリといったゴミは、立った体勢から見てもはっきりと確認できるわけではありません。
しかし、ゴミがついていると色がくすみ、全体の印象としては薄汚くなります。
ブラッシングでゴミを払い落とすだけでも、発色が良くなり艶も出て、靴は一段ときれいに見えます。
もうひとつは、「革の乾燥を防ぐ」効果です。
靴についたホコリやチリは、革の水分や油分を吸収して革の乾燥を早めます。
乾燥は革にさまざまな問題を引き起こす原因になるので、ブラッシングでゴミを払い落とすことは、革の乾燥を防いで革を良いコンディションに保つことにも繋がります。
上で紹介したように、ブラッシングは簡単にできて、しかも革靴をきれいにする効果の高い手入れ方法です。
ほかの手入れができなくとも、せめてブラッシングだけはしておきたいところです。
ブラッシングをするタイミングは、1 日履いたあとでも、履いて出かけるときでも構いません。
以下の記事で、おすすめのブラシやブラッシングするときのコツを紹介しているので、あわせてご覧ください。
1 ヶ月履いたら、乳化性クリームを使って手入れする(たいせつさレベル:★★★★☆)
月に 1 回(または 5、6 回履いたら)くらいの頻度で、乳化性クリームを使った手入れをします。
乳化性クリームとは、革に潤い(水分と油分)を与えるためのクリームです。(ちょっとした艶出し効果もあります)
革は、時間が経つにつれて乾燥が進み、乾燥はひび割れや色あせといった問題を引き起こします
定期的に乳化性クリームで革に潤いを与えて乾燥を防ぐことが、革靴をきれいな状態に保つための大切なポイントになります。
下の写真は、1 ヶ月以上手入れをサボっていた靴の写真です。
シワのあたりの色が褪せてしまっており、色艶もありません。ひび割れはありませんが、このまま履き続けたらシワの部分にひび割れができてしまいそうです。
これを、乳化性クリームを使って手入れすると下の写真のようになります。
見た目では分かりませんが、乳化性クリームを塗ったことで革が潤っています。
また、発色が良くなり艶も出て、使用感がありながらも清潔感のある雰囲気です。
月に 1 度くらいの頻度で乳化性クリームで手入れをすれば、乾燥によって起きる問題を防ぎながら、艶のあるきれいな状態をキープすることができます。
はじめは面倒に感じるかもしれませんが、月に 1 度乳化性クリームを使って手入れするようにしましょう。
乳化性クリームを使った手入れに必要な道具や詳しい手順は、下の記事で紹介しています。
3 ヶ月履いたら、鏡面磨きをしてみる(たいせつさレベル:★☆☆☆☆)
新品で購入してから 3 ヶ月ほど履いたら、鏡面磨き(きょうめんみがき)をするいいタイミングです。
鏡面磨き(別名ハイシャイン)は、ワックスを使って下の写真のように革靴をピカピカにする仕上げのことを指します。
鏡面磨きには革に潤いを与える効果はないため、革靴を長く履くうえで必ず必要なわけではありません。
しかし、この鏡面磨きをすることで革靴が一気にゴージャスになり、普段とは違った雰囲気を楽しむことができます。
実は、この鏡面磨きは新品の靴にするのは、靴磨きのプロでも苦労すると言われています。(おそらく、革が固く毛穴が引き締まっていて、ワックスが定着しにくいからだと思います)
3 ヶ月くらい履けば、革も多少馴染んで柔らかくなっているので、鏡面磨きをするには良いタイミングです。
鏡面磨きをするには鏡面磨き専用の道具が必要になり、またやり方にはちょっとしたコツがあります。
下の記事で鏡面磨きについて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
半年履いたら、ソールやコバの手入れをする(たいせつさレベル:★★★☆☆)
半年履いたら、ソールやコバ(アウトソールが側面に出ている部分)の手入れをします。
ソールやコバは、靴の部位のなかでも目につきにくい部位なので、なかなか手入れをする気になれないかもしれません。
しかし、手入れをすることで革靴の状態が一段と良くなるほか、その靴に対する愛着がグッと深まります。
ソールを手入れをして、革靴の寿命を延ばす
ソールの手入れは、ソールの寿命を伸ばすこと、ひいては靴自体の寿命を延ばすことにつながります。
ソールは常に地面と擦れているので、すぐに傷んできます。
特に、一度水に濡れるとボロボロになり擦り減りが早まります。
ソールが擦り減ると、いずれソール全体を張り替える「オールソール」という修理をする必要がでてきます。
同じ靴をオールソールできる回数は限られているので、できるだけソールを長持ちさせてオールソールまでの時間を先延ばすことで、靴自体の寿命も延びます。
ソールを手入れすることで、傷んでボロボロになったソールの革の繊維が引き締まり、擦り減りを軽減することができます。
普段は目に見えない部分なので、手入れする気がおきないかもしれませんが、半年に 1 度くらいの頻度でソールを手入れできればベストです。
ちなみに、手入れをするべきなのはレザーソールのみで、ラバーソールの場合は手入れは必要ありません。
コバを手入れして、革靴を一段ときれいに見せる
革靴のコバを手入れすると、革靴全体の印象が一段ときれいに見えます。
革靴の手入れというと、アッパー(ソールより上側の部分)に目が向きがちですが、いくらアッパーがきれいでもコバが汚れていると靴全体の印象としては汚く見えてしまいます。
下の写真は、コバを手入れした靴とコバを手入れしていない靴を比較した写真です。ソールに注目してご覧ください。
コバが手入れされている靴(上側)は靴全体がきれいに見えますが、一方で、コバが手入れされていない靴(下側)は靴全体の印象が汚く見えるのが分かるでしょうか?
このように、コバを手入れすることで靴全体の印象が一段と良くなります。
ちなみに、このコバは革靴の「バンパー」のような役割をしています。
靴を上から見ると、アッパーよりもコバが外側に出ているのが分かります。
このコバがあることで、どこかにぶつけてもコバがアッパーを守ってくれます。逆を言えば、コバは傷がつきやすい部分だとも言えます。
なにも手入れをしていないと、どんどん傷だらけになって汚く見えてしまうので、半年に 1 度くらいはコバも手入れしてあげましょう。
1 年履いたら、内側の手入れをする(たいせつさレベル:★★☆☆☆)
新品の靴を買って 1 年履いたら、革靴の内側を手入れしましょう。
革靴の内側には、気がつかないうちにホコリや靴下の繊維、足からでた皮脂などのゴミが溜まっていき、臭いやカビの原因になります。
内側のゴミは少しずつ溜まっていくので頻繁に手入れをする必要はありませんが、1 年も履けばかなりゴミが溜まっているので、手入れをする良いタイミングです。
内側の手入れには、臭いやカビを予防する効果があるほか、とてもスッキリした気分で履くことができます。
内側は目につかないので手入れがおろそかになりがちですが、忘れずに手入れをするようにしましょう。
おわりに
ここまで読んでいただきありがとうございました。
革靴を定期的に手入れすると、どんどん愛着が湧いてきて手入れするのが楽しくなるはずです。
愛着が湧いてくれば、大切に履くようになるのでさらにきれいに長く履けるようになります。
定期的に革靴を手入れして、ぜひ革靴を長く楽しんでください!