革靴をピカピカに磨くのは、革靴の醍醐味の一つです。
キラリと光るつま先やかかとが、全体のコーディネートを引き締めて華やかにしてくれますし、綺麗に光る靴を履いていると気分も上がります!
そんな靴磨きの必須アイテム「ワックス」。
私は今まででいろんなワックスを試してきて、「これが光らせやすいな。」と感覚的に思うワックスを選んで使っていました。
ところが、他の人が別のワックスを使っているのを見て、「本当に今使っているワックスがベストなのだろうか…」と思うようになりました。
そこで、この記事では、定番とも言える人気の 6 種類のワックスを実際に使って比較してみたいと思います!
この記事のもくじ
前提知識:ワックスとクリームの違い
なかには、ワックスとクリームの違いがはっきりわからない方もいらっしゃると思うので、まずはこの 2 つの違いについて簡単に解説します。
クリームは、さらに乳化性クリームと油性クリームの 2 種類に区別されます。
乳化性クリームは、主に革の「保湿」を目的として使用します。乳化性クリームを塗ることにより、革を乾燥から守り、ヒビ割れを防いだり、革の風合いを保ったりする効果があります。
それに対し、油性クリームとワックスはどちらも見栄えを良くする「ツヤ出し(= 光沢を出すこと)」を主目的として使用します。油性クリームにもワックスにも主成分に蝋(ロウ)が含まれており、革の表面をコーティングするように蝋を塗ることで、パリッとした光沢が出るようになります。
乳化性クリームにも蝋は含まれているので、多少のツヤは出ますが、パリッとした光沢ではなく、どちらかというと革本来の自然なツヤになります。
それ以上のツヤを出したければ、より蝋が多く含まれている油性クリームかワックスを使うことになります。
基本的に靴の手入れをする際は、乳化性クリームで革の保湿をおこなった後、仕上げとして油性クリームやワックスでツヤ出しするという流れになります(油性クリームには保湿成分が含まれているものもあります)。
油性クリームもワックスもどちらも主成分は油と蝋です。ただし、その割合が異なります。
油性クリームは油の割合が大きく、クリーム状の液体で、小さい瓶に入っていたり、ボトルのようなものに入っていたりします(乳化性クリームも同様にクリーム状の液体です)。
クリーム状になっているので、布やブラシで取って手軽に塗ることができます。
一方、ワックスは蝋の割合が大きく、固形で、小さい缶のようなものに入っています。
こちらは固形になっているので、水で伸ばしながら塗らなくてはいけません。一手間かかります。その分、油性クリームでは出せないような、革の表面を鏡のようにピカピカにするツヤ出しができます。これを一般に「鏡面磨き」と言ったり、「ハイシャイン」と言ったりします。
種類 | 形状 | 使用する目的 | どんなときに使う? |
---|---|---|---|
乳化性クリーム | 液体 | 保湿 | 革を保湿したいとき。革本来の自然な革のツヤを楽しみたいとき。 |
油性クリーム | 液体 | ツヤ出し | 手軽に革靴をツヤツヤにしたいとき。 |
ワックス | 固体 | ツヤ出し | 革靴を最高にピカピカにしたい(鏡面磨きしたい)とき。 |
今回は、ワックスをいくつかピックアップし、実際に使ってみて、光沢具合や使用感を比較してみたいと思います。
ワックスを実際に使って比較してみる
比較には、こちらのレザーを巻きつけた棒(自作)を使用します。
棒にくっついているレザーは一般的なスムースレザーで、伸ばして形を作ることで、ピンと張られた靴のつま先の状態を再現しています。
後ろはこのように釘でとめています。
使用する道具は、ワックスとネル生地、水です。ネル生地は、各ワックスで新しい面を使います。
靴磨きの大会では、一足 20 分くらいの所要時間が設けられています。今回は、ワックスを塗る範囲が靴のつま先と同じくらいの大きさであることと、私の技術力も加味して、10 分でどれだけ光らせることができるかやってみます。
ワックスは全て色なし(ニュートラル)を使用します。
また、ワックスを塗る手順は、「革靴をピカピカに輝かせる鏡面磨き(ハイシャイン)の方法とその落とし方」の鏡面磨きの手順に従います。
比較する定番ワックス 6 種の紹介
今回の比較にエントリーした 6 種類のワックスをご紹介します!
私が気に入っているもの、通販サイトでレビューが高いもの、光らせやすいとウワサのものなどを選びました。
参考として、それぞれのワックスの Amazon での価格(2018 年 4 月時点)も掲載しています。
1. KIWI Shoe Polish キィウイ シューポリッシュ(¥550)
もとはオーストラリアの軍兵が使っており、このワックスでピカピカに磨かれたブーツを見たアメリカ兵やイギリス兵が「なにあれ、めっちゃ光ってるじゃん!」と注目。口コミで話題となり、瞬く間に世界に広まったワックス。
かわいいパッケージに隠れた実力はいかほどか。
2. KIWI Parade Gloss キィウイ パレードグロス(¥999)
キィウイ シューポリッシュを、より綺麗に早く磨けるように進化させ、上位互換品として誕生した兄貴分的な存在のワックス。靴磨きが好きな人の間で、一番光りやすいとウワサされる。
キィウイ シューポリッシュの兄貴分としての意地を見せたい。
3. M.MOWBRAY High Shine Polish エム・モウブレイ ハイシャインポリッシュ(¥864)
良質な革を生み出すタンナーがひしめき合う、イタリア トスカーナ州で生まれたワックス。熟練の職人による頑固なまでの「ハンドメイド的製法」を守り、伝統と品質、こだわりを現代に受け継いでいる。
頑固オヤジの職人が作るワックス、時代の波にのまれず立ち向かう姿に皆、涙する…!
4. Saphir サフィール ビーズワックス(¥756)
「常にその商品が最高の効果を発揮するために、厳選した天然原料から製品を製造し提供すること」をポリシーとして掲げる、フランスの名門、サフィールのワックス。
私も愛用しているワックスだが、その地位を守ることができるのか!?
5. Saphir Noir Mirror Gloss サフィール ノワール ミラーグロス(¥2,376)
異様な高級感を放つこのワックスは、簡単にいうと、サフィール ビーズワックスのプロ仕様として誕生したワックス。今回エントリーしたワックスの中で、ダントツにお値段が高いが、かなり早く光らせることができるらしい。
他のワックスとの格の違いを見せつけることができるのか…!
6. Boot Black Silver Line Shoe Polish ブートブラック シルバーライン シューポリッシュ(¥756)
最後にエントリーするのは、コロンブスから販売されているワックス。靴磨きプロたちが試行錯誤の末にたどり着いた、メイド・イン・ジャパンの製品である。
大和魂は、本場のワックスさえも凌駕するのか。靴磨きの世界に今、旋風が巻き起こる!!
いざ、ワックスを塗る!
役者は揃いました!
それでは、実際にワックスを塗っていきます!
といいつつ、作業自体は地味なので、数枚だけ写真を載せておきます。
結果はいかに…!
結果発表です!
10 分磨いた結果がどうなったのか、みてみましょう。
それぞれのワックスの仕上がりと、個人的な感想を書いてみます。
1. KIWI Shoe Polish キィウイ シューポリッシュ
かなり綺麗に光りました!ギラッと光っている印象です。
水分を飛ばすため、1 週間ほど蓋を開けて乾燥させてから使用しました。
水分が抜けている状態でも程よく柔らかく、クロスに取りやすいです。比較的、水を多めに垂らしました。
5 分ぐらいたったタイミングで、光り始めました。まだまだ光りそうな予感。
2. KIWI Parade Gloss キィウイ パレードグロス
かなり綺麗に光りました!シューポリッシュと比べると、繊細な光り方です。
水分を飛ばすため、1 週間ほど蓋を開けて乾燥させてから使用しました。
シューポリッシュと同じく、ワックスは柔らかめでクロスに取りやすいです。
5 分ぐらいたったタイミングで、光り始めました。まだまだ光りそうな予感。
3. M.MOWBRAY High Shine Polish エム・モウブレイ ハイシャインポリッシュ
ひ、ひからない…!
水分を飛ばすため、1 週間ほど蓋を開けて乾燥させてから使用しました。
しかし、それでもまだ水分が多いのか、他のワックスに比べて水気が多く、ワックスが革に染み込んでいっているような感じがしました。
使い方が違うか、技術が足りないのか… 時間をかけても光りそうにありませんでした。
4. Saphir サフィール ビーズワックス
控えめに光りました。
水分を飛ばすため、1 週間ほど蓋を開けて乾燥させてから使用しました。
ワックスの固さ、延びは、平均的だと思います。開始 7 分くらいたったタイミングで、少しずつ光りだしました。
時間をかければ、まだまだ光る予感!
5. Saphir Noir Mirror Gloss サフィール ノワール ミラーグロス
かなり綺麗に光りました!
もとから水分量が少ないため、少し短めで 2 日ほど乾燥させて使用しました。
他のワックスに比べるととても固く、クロスに取りづらいが、塗ると伸びがいい感じがしました。
なんと、開始 3 分くらいで光り始めた!まだまだ光る予感。
ワックスを塗っている部分と、塗っていない部分の境目が少し白くなりました。
6. Boot Black Silver Line Shoe Polish ブートブラック シルバーライン シューポリッシュ
ひ、ひからない…!
水分を飛ばすため、1 週間ほど蓋を開けて乾燥させてから使用しました。
モゥブレィのハイシャインポリッシュと同じく、他のワックスに比べて水気が多く、ワックスが革に染み込んでいっているような感じがしました。
使い方が違うか、技術が足りないのか… 無念…
おすすめのワックスはコレだ!
それぞれの特徴をつかんだところで、おすすめのワックスをピックアップしてみます!
コスパ重視の方は、KIWI シューポリッシュ
今回使用したワックスのなかで最安値でしたが、しっかりと光りました。
コズパを重視される方にはこちらがおすすめです!
高級感を打ち出したパッケージのワックスが多いなか、こんな可愛らしい見た目でもこの実力。能ある鷹は爪を隠す、といったところでしょうか。
繊細な光り方をさせたい方は、KIWI パレードグロス
キィウイ シューポリッシュよりも上品な光り方をさせたい方におすすめです。
お値段はキィウイ シューポリッシュよりも少々お高めですが、他のメーカーのワックスと比べれば決して高額ではありません。兄貴分のワックスとして十分に実力を発揮しました。
ただ!残念なことに生産が終了しているようです!(【悲報】KIWIのワックス、パレードグロスって生産終わってるってご存知?)
今のうちに買い込んでおきましょう!
スピード重視の方は、Saphir Noir ミラーグロス
今回使用したワックスの中でも、ダントツで早く光り始めたのがこちらのワックス。
とにかく早く、かつ綺麗に仕上げたい方におすすめです。
価格は比較的お高めですが、その実力は確かです。パッケージの高級感が、靴磨きの時間をより一層特別にしてくれる効果も。
スピード重視でない方でも、一度は試してみる価値ありです!
ピカピカにするだけじゃない!ワックスの効果
今回は、ワックスの光沢具合などを中心に比較をおこないました。
冒頭では省略しましたが、実はワックスにはツヤ出し以外の効果もあります。
最後にそのあたりを簡単に解説して終わりにしようと思います。
防水する
ワックスで磨くと、表面がロウでコーティングされている状態になります。
このコーティングが水を弾くので、防水の効果があります。ふとした拍子に何かをこぼしてしまったときに、シミを防ぐ効果が期待できます。
傷を防ぐ
何かが当たったとき、表面のロウのコーティングがバリアの役目を果たします。深い傷でなければ、ロウのコーティングが革を守ってくれるのです。
デメリットもあります
ワックスには、デメリットもあります。
「革がヒビ割れする可能性がある」ということです。これは、ロウのコーティングが革の呼吸を止めてしまうからです。
革は湿度(相対湿度)の変化に応じ、容易に水分を吸収し、また放出します。このように、革が水分を吸収し、放出する作用を “革は呼吸する” とたとえ、革の最も大きな特色ともいえるのです。
革は自ら水分の吸収と放出を繰り返し、最適な湿度を保とうとしますが、ロウのコーティングにより、それができなくなります。この状態が長く続くと、吸湿できずに乾燥してしまい、表面がヒビ割れを起こしてしまいます。
もちろん、ワックスを使ったら必ず革がヒビ割れるというわけではなく、定期的に落とせばまったく問題はありません。
ワックスで鏡面磨きをする前には、表面の汚れを落として乳化性のクリームでしっかりと保湿をおこない、かつ 2 〜 3 ヶ月に一度は鏡面磨きを落とすようにしましょう。
おわりに
残念ながら、今回の検証で、私が使っていたサフィール ビーズワックスは、その地位を守ることができませんでした… ですが、今までかなりお世話になったので、たまには使ってあげようと思います。
ワックスを使った鏡面磨きには少しコツがいるので、初めはうまくいかないかもしれませんが、慣れると 10 分ほどでピカピカにできます。楽しくてついついやり過ぎてしまうかもしれませんが、上でも触れたように、たまにワックスを落としてあげることも大切です。
こちらの記事 「革靴をピカピカに輝かせる鏡面磨き(ハイシャイン)の方法とその落とし方」で、鏡面磨きの細かい手順や、ワックスの落とし方を紹介しています。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。