(第 7 回)革靴好きをこじらせて靴作りをはじめました〜底付け・すくい縫いと出し縫い〜

どうも、靴づくり一人前のくすみです。

前回までで、吊り込みを終えいよいよ本格的な底付けの工程です。
靴を作る前は、アッパーこそが靴の顔でしょと浅はかな考えを持っていました。決してそれも間違いではないのですが、底付けがいかに大切かということを思い知りました。

木型の形も、アッパーのミシンの縫い目の仕上がりももちろん靴の見た目に大きく影響するのですが、底が付くことで、一気に靴が引き締まり雰囲気が変わります。
逆に言うと底付けの仕上がりによって、靴の美しさや存在感が大きく左右されます。

冒頭から興奮してしまいましたが、今回はすくい縫いから出し縫いまでの工程についてご紹介させていただきます。

糸作り

アッパー(ライニング含む)と、中底と、ウェルトを縫い合わせる『すくい縫い』の工程に入る前に糸を用意します。
こんな風に両手を伸ばした長さの3倍の長さの糸を用意し、その糸にチャンと呼ばれる松ヤニと油を混ぜたものを塗っていきます。
結構な長さを必要とします。

チャンを塗りすぎている部分がないように、しっかりと乾いた布で拭き取ったら糸の完成です。

すくい縫い

中底、ライニング、アッパーと、さらにウェルトに穴を開けます。

その穴の両側からすくい針を通し、一縫い一縫いウェルトを縫い付けていきます。
ご覧の通り、ミュージシャンのDAIGOさんのようなグローブを身につけて、しっかりと糸を絞めます。

やはり、中底、ライニング、アッパー、ウェルトに穴を開けるのはかなりのパワーを要するため、ちゃんと固定する必要があります。靴を固定しているのは『わげさ』という革のベルトのようなもの。
底付けの工程は結構パワー系。一日作業を終えると、かなりクタクタになります。

こんな感じですくい縫いが出来上がりました。

今回は中物にフェルトを使おうということに決まりました。
普段コルクのグッドイヤーの靴を履いている身としては、履き心地も気になるところです。
中底に掘った溝を薄い革の切れ端で埋めたら、シャンクという硬い金属を貼り、その上から接着剤でフェルトを貼り付けます。

かかと部分には『ハチマキ』と呼ばれる革を貼れば、次はアウトソールの加工です。

アウトソール加工・接着

革底用の大きな革に、ウェルトのサイズより少し大きめに型を取り切り出します。
アウトソールの周りは少しだけ厚みを落として、さらに接着を促すために少し表面を荒らします。
ガラスの破片を使って、こんな感じで表面を削っていきます。

それぞれを貼り合わせたら、革包丁でサイズを整えます。
最初はぎこちなかった革包丁の扱いにも慣れ、まるで体の一部かのようにスルスルと革包丁で分厚い革を削り、瞬く間にコバの外周が整っていきます。

この時点でもまだ少しコバの外周は大きめ。
出し縫いをした後にまた整えます。

ドブ起こし

アウトソールを貼り付けたら次は出し縫いです。
出し縫いとは、ウェルトとアウトソールを縫い付ける作業です。この構造が靴を修理して長く履くことを可能にしているんですね。先人たちの知恵の結晶です。

その前に、高級紳士靴ならではの仕様のひとつ、ヒドゥンチャネルという仕上げの下準備をします。ヒドゥンチャネルは出し縫いの縫い目を革の中に隠して、表に出ない仕上げのことです。

初回から手先だけは器用と再三申し上げてまいりましたが、このドブ起こしという作業がうますぎて外注として仕事を受けていいレベル。
一定の厚みを保って薄く革に切り込みを入れていきますが、だいたい途中で切れてしまったり、穴が開いてしまうものなのだそうです。

はじめてでこれはすごいとお褒めに預かり、僕も調子に乗って、僕に外注させたら高いですよ〜なんて冗談を言いながら、気分良くランチを食べます。

さて、切れ目を入れた革を起こしたら、出し縫いをする部分にこのように溝を入ます。

さらに、ウェルト側にも縫い目と同じ間隔のウィールを当てます。ウィールを熱して…

ウェルトに当てていきます。
これをすることで、ギザギザの跡が残って、同じ間隔で塗っていくことができるというわけです。

ただこれが難しい…
やり直しがきかない作業なので、仕上がりにも大きく影響してきます。

出し縫い

すくい縫いの糸とは素材は違いますが、同じような容量で出し縫い用の糸を用意します。

針で穴を開け、そこに糸を通してキツく結びながら、ウェルトとアウトソールを縫い付けていきます。
昼過ぎからはじめて夕方までの数時間でだいたい半分程度しか終わりませんでした。

こちらの作業もかなりパワーが必要で、クッタクタになったので続きは次の作業日に。
次の日はしっかり筋肉痛になります。

また別の日に残りの出し縫いを完成させ、次は縫い目を隠すドブ伏せです。

ドブ伏せ

出し縫いが終わったら、ドブ起こしの工程で起こした革を伏せて、出し縫いの縫い目を隠します。
革に少しだけ水を含ませたら、『こくり棒』という棒を使って底面を整えます。
また仕上げの工程でさらに整えるのですが、縫い目のデコボコが残らないように、しっかりと擦っていきます。

カタオカ先生と仕上がりのイメージを相談させていただきながら、コバをひと回り削って整えていきます。個人的にはコバがあまり出すぎていない方が好みですので、そのあたりをお伝えしつつちょうど良いサイズに整えていきます。

冒頭にお伝えした靴底の存在感はまだこの記事では伝え切れませんでしたが、次回以降かかとをつけてコバに色が入ったとき、それを実感していただけると信じています。

パワー系の作業が続いてかなり大変でしたが、いよいよ次回靴が完成します。
ご期待ください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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