どうも、もうすぐ靴づくり一人前のくすみです。
前回までで、本番の靴のアッパーを完成させていますので、ここからは木型に吊り込んでいく作業です。
アッパーが靴の形になり、いよいよ靴らしくなってくる靴づくりの醍醐味とも言える工程のひとつです。
中底の加工
さて、アッパーの吊り込みに入る前に、いろいろと準備をする必要があります。
吊り込みを除き、ここからの工程は仮縫い靴では経験していないものもあるので、慎重にやっていきましょう。
まずは中底の加工です。
中底用の固めの革から中底のサイズをカットし、それを木型の底面に釘で留めます。
中底の周りを木型の大きさに合わせてカットすると、こんなにもキレイに仕上がります。
ちなみにこちらはカタオカ先生に仕上げてもらった左足。時間の都合もありますので、カタオカ先生に左足の作業をしていただき、僕は右足を進めてまいります。
左右の出来栄えの違いにどこまで差が出るのか。はたまた出ないのか。ご期待ください。
中底の加工はこれだけではありません。
ハンドソーンウェルテッド製法と言われている今回の靴の製法は、アッパー(ライニング含む)と、この中底と、さらにウェルトを縫い合わせていきます。
この3つを縫い合わせ作業を「すくい縫い」と呼びますが、そのためには中底にこのような段差を設けて、この段差の縁に穴を開けて糸を通していきます。
こんな感じ。
カタオカ先生の見よう見まねで、なんとかそれっぽく仕上げましたが、よくみると右足(写真左)は革表面がザラザラしてます。
先生の左足は、さっぱりとした美しい仕上がり。
さっそく差が出ています。
続きまして、木型にベビーパウダーを塗り、吊り込んだ後に木型を抜きやすくしておきます。
そしたら、いよいよ本番の靴での吊り込みです。
吊り込み
アッパーとライニングの間に接着剤を塗り、そこに水に浸した芯材を入れていきます。
カウンター(かかとの芯材)もしっかりと長めなので、足の後ろ側はがっつしホールドしてくれることでしょう。
さらに本番の靴では、土踏まずの部分と反対の外側の部分に補強用の革を入れていきます。簡単にいうと薄めの芯材のようなイメージです。
履き心地に期待が高まります。きっとこの靴は僕の足だけじゃなく、心をも掴んで離さないことでしょう。
ただ、それもここからの吊り込みのの出来栄え次第。
気を引き締めます。
芯材と一体化したアッパーをベビーパウダーの香りを漂わせる木型に這わせ、いよいよ吊り込んでいきます。
全体的に大きく吊り込んだら、この日の作業は終了ですが、実はまだつま先の側の芯材は入っていません。
一旦つま先の芯材は入れずこのまま放置して、アッパーにクセをつけます。
次回の作業でより細かく吊り込んでいくわけですが、ここで問題発生です。
キャップトゥの縫い目が裂けてしまいました。どうやらアッパーを縫い合わせる糸が、鍛え上げられた僕の右腕に耐えられなかったようです。
革の漉き具合、縫い方にも問題があったのではないかと思われます。
シロエノヨウスイの高井さんに手際よく修理をしていただきます。かかと側が吊り込まれた状態のまま、接着剤を塗り、テープを貼り、そらにその上からミシンで縫っていただきます。
お二人には毎回僕の失敗をカバーしていただいている気がしています。
いつもありがとうございます。
芯材のくせ付け
アッパーの裂けた部分が直ったところで、つま先部分に芯材を取り付けます。
その前にライニングをもう一度吊り込み直し、その上から水に浸した芯材を接着します。
この段階では芯材は柔らかいので、アッパーと同じような感覚で吊り込んでいきます。
芯材が濡れているタイミングで、底の部分に角を出していきます。
ランチから戻ったら、今度こそアッパーの吊り込みです。
その前に、つま先の芯材の凸凹したところを革包丁で漉いて厚さを調整します。細かい部分ですが、こういうところにカタオカ先生の靴づくりへのこだわりを垣間見ます。
つま先だけでなく、土踏まずのあたりも釘を外してもう一度吊り込み直します。
余っている革を細かく引っ張って、できるだけアッパーが木型に沿うように伸ばしていきます。
木型が非常に複雑で立体的なので、ひとつの方向からだけではなく、いろんな方向からアッパーを引っ張ることでこの立体感を実現していきます。
こちらがカタオカ先生が吊り込んだもの。
そしてこちらが僕が吊り込んだもの。
こうなると一気に靴らしさを帯びてきます。
この状態でまたしばらく時間を放置して、アッパーを木型に馴染ませます。
次回は、吊り込んだアッパーと中底を縫い合わせるすくい縫いといよいよ底付けの工程です。僕の秘めた才能を発揮する工程もございます。
吊り込んで靴の形にになってきましたが、底付けを経てさらに靴らしさが増してきますよ。
ご期待ください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。