どうも、靴づくり見習いのくすみです。
前回まででアッパーのライニングの裁断を行いました。
アッパーやライニングを縫い合わせていきたいところですが、その前に漉き(すき)加工をしなければなりません。
漉き加工とは革を部分的に削って薄くする加工のこと。
単純に革を縫い合わせると革の厚さが倍になって、仕上がった靴の縫い目がデコボコになってしまいます。
それを漉き加工で革を薄くすることによって、革の縫い目をスムーズに仕上げようということです。
漉き加工
まずは漉き加工はこちらの漉き機を使って行います。
簡単に言うとこの機械は、回転する刃に革を添わせてスーッと革の断面を漉いてくれるという機械です。
便利な機械ではありますが、漉く幅と厚さの調整がすごく難しい機械でもあります。
というのも、革を縫い合わせる場所によって、漉く幅と厚さを変える必要だからです。
このように機械の横のダイヤルなどを調整することで、漉く幅と厚さを変えていきます。
この作業は慣れが必要で何度も革の端切れで練習をさせてもらい、ある程度納得のいく漉きができるようになったものがこちら。
これはタンになるパーツの床面です。
さらに、幅と厚さを変えて漉き加工をしたものがこちら。
漉きの厚さが違うので、床面の色が違うのがおわかりいただけると思います。
こんな感じで手際よく他のパーツも漉いていきます。
機械に入れると左から右へ革をスーッと送ってくれるので、作業自体はすごく大変ということはありません。
場所によっては『ゼロ漉き』と言って、0ミリの厚さになるように漉くところもあるのですが、漉きの厚さが十分でない部分はこんな感じで革包丁で微調整をしていきます。
革包丁を持ち慣れていない僕にとってはこの作業はかなり難しく、いくら器用とはいえなかなかに時間がかかります。
しかし、この漉き加工が靴の仕上がりに大きく影響するのは想像に難くありません。なので、カタオカ先生に何度も確認をお願いしながら、時間かけて納得のいくまで作業をします。
そんな感じで仕上がったものがこちら。
なかなかいいじゃないすか。
こちらはアッパーとライニングだけですが、芯材の加工もしていきます。
厚めの革から芯材を切り出したら、破片が胸へと突き刺さらないよう気をつけながらガラス片で銀面を削っていきます。
この作業も体験させていただきましたが、先生にお手伝いいただきました。
ほら、先生にかかればこの通り。
さすがです。
ミシン縫い
別の日。
いよいよミシンでアッパーとライニングを縫い合わせていくわけですが、ミシンは今までの比でないくらい難しかったです。
圧倒的に難しい。
なぜならミシンは全身を使って行う作業だからです。
足でペダルを踏み、手で革のコントロールをし、目で縫い目を確認しながら、耳でミシンのモーターの駆動音を聞き、鼻で革の香りを嗅ぎながら、舌で接着剤の苦味を味わう…
全身だけでなく五感をフルに活用しなければならないのがこのミシン縫いの作業です。
というわけで、まずは簡単な部位から。
ライニングを縫い合わせます。場所によっては事前に接着材を塗って、革同士を固定しておきます。
続いて、かかと部分や、ライニングとタンを縫い合わせます。
ミシンも漉きと同様に、革の端切で何度も練習しましたが、特にカーブが難しく縫い目がガタガタになってしまいます。
また、緩やかな曲線であっても、革の断面から1mmの幅を保って縫っていくのは、やはり素人には難しい…。
ここで「仮縫いだからいいや…」と自分を甘やかしてしまうと、きっと本番でも美しく仕上がることはありません。なので絶対に綺麗に仕上げたいと思って何度も練習しましたがそれでも難しかったです。
手先の器用さが唯一の取り柄の僕が言うんだから間違いありません。
今回デザインにスワンネックの装飾を施しましたが、うまくいってもこの程度です。(もっとヒドいところもあります)
滑らかなカーブを描くのためには、ミシンを止めずにゆっくり方向転換していくという、ミシンのコントロール技術が必要です。
ま、今回は仮縫いだからいいや…。
また別の日。
今度はトゥキャップやロングバンプのパーツを縫い合わせ、アッパーを完成させていきます。
接着効果を高めるために、革が重なる部分の銀面を少しヤスリで削って接着材を塗布します。
この日はアッパーをメインに縫うので、ゆっくり慎重に。
トゥキャップの部分はダブルステッチと言って、2本のステッチを狭い間隔で縫っていきます。これも間隔を均一に保つのが非常に難しく、ところどころガタガタになったり縫い目が重なってしまったりしたところもありました。
次は、羽根の部分とロングバンプの部分。
このとき、内羽根部分をビニール紐で結んで固定し…
こんな感じで接着してからミシンで塗っていきます。
中でもアッパーとライニングを縫い合わせる部分は革が重なって厚みが増していてるので、ミシンを通しにくくなります。結果、ミシンの下糸が絡まって先生に何度も修正をしていただくという結果に。
ステッチの仕上がりがこの後のモチベーションを保つ上でも重要だと先生にプレッシャーをかけらながら、集中する僕にどうでもいい質問ばかりを投げかけて気を逸らそうとする先生。
ステッチがガタガタになってしまったのは先生のせいでもあります。
とは言え、質問にもちゃんと答えてくれて時間をかけて親切に教えてくれる優しい先生です。(この日、遅刻して直接言えなかったので今言いますが)
各パーツを縫い合わせ、最終的にできあがったアッパーがこちらです。
い…愛おしい…
ステッチはガタガタでもここまで作り上げたのは感動です。
そんな僕の感動を察してくださったのか、ちょっと軽く釣り込んでみます?と先生。
是非!ということで、大まかな流れを説明してもらいつつ、あくまで簡易的に釣り込んでみました。
釣り込みの詳しい工程はまた別の記事で。
と…尊い…
こうなるといよいよ靴って感じです。
この木型に革を添わせられるのか不思議で仕方ありませんが、それ以上に感動を覚えます。
次回、本格的に釣り込みをするために、木型に中底を馴染ませる作業を済ませておく必要がありました。なので、名残惜しくも釣り込みは一旦このタイミングで外します。
中底加工
中底は木型に沿って先生が事前に用意してくださったものです。
それに水を含ませて柔らかくします。
木型に合わせたら3ヶ所だけ釘を打ち、ゴムチューブでぐるぐる巻きにします。
このまま数日間放置することで、中底が木型の底に馴染むわけですね。
今回はここまでです。
靴づくりの工程の中でも、釣り込み作業が一番楽しい工程のひとつと感じる方が多いようです。
でも個人的には、裁断した革のパーツが徐々にアッパーの形に仕上がっていくのは、ワクワクを感じました。難しかったけれど、ミシンもすごく楽しかったです。
集中して黙々と作業をするので小学校の工作の授業を思い出させてくれる、大人になってからは贅沢とも思えるような時間です。
というわけで、次回は芯材を使って本格的な釣り込みを行ってまいります。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。