本当のお金持ちが履いている!?マッケイ製法の革靴とは

革靴のなかでもイギリス靴とイタリア靴というのはよく比較されます。イギリス靴は質実剛健なガッチリしたイメージ、イタリア靴は色気があってスマートなイメージがあります。

そんなイギリス靴とイタリア靴は、作りからして違います。イギリス靴がグッドイヤー・ウェルト製法と呼ばれる作り方をするのに対して、イタリア靴は**マッケイ製法**と呼ばれる作り方が主流です。

履いた人を色気のある伊達男に変身させるイタリア靴。その秘密はマッケイ製法にあるのです。

この記事では、そんなマッケイ製法の靴の特徴や構造を解説しつつ、「お金持ちはマッケイ製法の革靴を履く」と言われる理由も明らかにしようと思います。

マッケイ製法の靴ってどんな靴?

はじめに、マッケイ製法の靴がどんな靴なのか、ビジュアルでお見せしましょう。

比較対象として、まずはグッドイヤー・ウェルト製法の靴を見てみます。

そして、こちらがマッケイ製法の靴です。

いかがでしょうか。

グッドイヤー・ウェルト製法の靴が、丸みを帯びていて、重たそうな印象を受けるのに対し、マッケイ製法の靴のほうがシャープで、軽そうな印象を受けませんか?

このように、すっきりした軽快な靴を作れるのがマッケイ製法の最大の特徴です。

なぜマッケイ製法はすっきりして見えるのでしょう?

これには、靴の「コバ」と呼ばれる部分が大きく関わっています。グッドイヤー・ウェルト製法の靴をソール(= 靴底の部分)に注目して見てみると、外に広がっているというか、はみ出しているのがわかるかと思います。

このはみ出している部分をコバといいます。

逆に、マッケイ製法の靴はコバがほとんどありません。

一般的に、コバが小さいほど、すっきりスマートな印象になると言われています。

グッドイヤー・ウェルト製法の靴は、構造上、どうしてもコバが必要になります。それは、糸で縫いつける際にコバの部分を縫い代として使用するためです(グッドイヤー・ウェルト製法の靴のコバをよく見てみると縫い目があるのがわかるかと思います)。

逆に、マッケイ製法は、糸で縫いつけるのを靴の内側でおこなうため、限りなくコバを小さくすることができます。

すこし構造を詳しく見てみましょう。

マッケイ製法の構造

下の図は、マッケイ製法で作られた靴の断面図です。

登場するパーツは、アッパー、インソール、アウトソールの 3 つです。

  • アッパー:足の甲を覆うパーツ
  • インソール:足裏に直接触れるパーツ
  • アウトソール:地面に直接触れるパーツ

インソールとアウトソールの間にコルクなどのクッション材を詰めたあと、3 つのパーツを靴の内側で縫いつけます。

靴の内側で縫いつけるために、コバを限りなく小さくできるのです。だから、スマートな印象の靴を作ることができるのですね。

そうなると、コバが小さいほうが単純に良いように思えますが、実はコバにはアッパーを守るためのバンパーの役割があります。

ソールの部分は堅い素材でできているため、多少の衝撃は問題ありません。一方、アッパーは柔らかい素材でできているため、すこしの衝撃でも傷ついたり消耗したりします。

コバが十分にないと、アッパーに直接ダメージを与えることになるため、靴の「耐久性」という面でみるとコバがあったほうが良いのです。

コバを小さく作るマッケイ製法は、耐久性を犠牲にして、デザイン性や美しさを追求する製法なのです。

他の製法との見分け方

靴の内側で縫いつけしているので、靴の中を覗くと縫い目が見えます。なかには縫い目が隠れているものがあるので、縫い目が見えないからといってマッケイ製法ではないとは言い切れませんが、縫い目が見えれば、マッケイ製法でほぼ間違いありません。

マッケイ製法の特徴

さて、マッケイ製法の構造がわかったところで、ここからは、機能的な利点・欠点をお話しようと思います。

軽くて返りがいい

マッケイ製法の靴は、他の製法と比べると余分なパーツがなく、とてもシンプルな作りをしています。そのため、軽くて、ソールの返りが良い(曲がりやすい)という利点があります。

さらに返りの良さを活かすために、アッパーにもカーフ(生後 6 ヶ月以内の仔牛の革)などの柔らかい革が使われることが多く、その柔らかさ、歩きやすさは「まるで靴下を履いているみたい」と言われるほど。

実際、マッケイ製法はもともと室内用の靴に用いられる製法だったと言われています。

長時間の歩行には向かない

歩きやすい反面、疲れやすいという欠点があります。

構造上、中物と呼ばれるコルクなどのクッション材を詰めるスペースを十分に確保できません。そのため、クッション性があまりなく、長時間の歩行や立ち仕事には不向きとされています。

室内用の靴のための製法という成り立ちから、長時間立っていたり、歩きまわったりすることを想定されていなかったのでしょう。

水が染み込みやすい

さらに、雨に弱いという欠点があります。

イタリアという温暖で雨が少ない地中海気候の地で発展してきたために、通気性は重視されてきましたが、防水性はあまり重視されてきませんでした。

濡れた地面を歩いたり、水たまりを踏んだりしてアウトソールの底面の縫い目が濡れると、自然とインソールまで浸水してきます。雨の日に履けば、浸水はほぼまぬがれません

クッション性や防水性を高めるために、底面にラバーを貼るという方法もあります。ただし、マッケイ製法の良さである返りの良さが失われてしまいます。

マッケイ製法の靴の寿命は?

マッケイ製法の靴は、耐久性の面でみるとグッドイヤー・ウェルト製法の靴に劣ります。そのため、マッケイ製法の靴は寿命が短いと言われています。

作りがシンプルなので、手間がかからない分、グッドイヤー・ウェルト製法の靴に比べて価格帯もすこし下がります。それでも、数万円はするので安い買い物ではありません。

どのくらい長く履けるのか、というのは気になるところです。

目安として、週 2 回ほど履いて 3 〜 6 年はもつと言われています。

とはいえ、日々のケアはかかせませんし、履いているとソールもだんだんすり減ってきます。ソールがすり減りきって穴が空いてしまう前に、修理店にソールの交換(オールソール)をお願いしましょう。

まとめ

マッケイ製法の靴は、見た目はスマートで履き心地も良い代わりに、長時間の歩行や立ち仕事には向かない雨に弱いという特徴をご紹介しました。

普段、外を歩きまわることはなく、ましてや雨の日に外に出るなんて論外。移動は主に車で、室内しか歩かない。というような「ザ・上流階級」のライフスタイルの人に向けた靴に思えます。

これが「お金持ちはマッケイ製法の革靴を履いている」と言われる理由です。

では、我々庶民には向いていないのか、というと決してそんなことはありません。普段、オフィスワークを中心にお仕事をされている方であれば、マッケイ製法の靴は十分に機能するでしょう。

他にも、デートの日、お休みの日、晴れた日にリラックスして外を散歩したいときなどにも活躍してくれますので、手元に一足はもっておきたい靴です。

ぜひ、お気に入りのマッケイ製法の靴を探してみてください。

この記事を書いた人

カタオカケン

東京在住、靴作りに勤しむ 27 歳です。作るのはもちろん、靴を眺めたり、靴を磨いたりするのも好きです。鏡面磨きはなかなか上手くできません。

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